仮想通貨登場から間もない頃、仮想通貨の熱狂的ファンは米ドルなど特定の法定通貨に対して価格が固定された通貨を嘲笑したものだ。しかし今や状況が変化し、仮想通貨テザー(Tether/USDT)は米ドルや日本円など主要国家が発行する通貨よりも多くの取引量を獲得している。さらに、ここ1年間で「安定したコイン」が仮想通貨業界で増加しており、将来的には必要不可欠なものになると考える人々もいるようだ。
JR Willett氏が執筆したMastercoin(マスターコイン)のホワイトペーパーは2012年時点で「安定したコイン」のアイデアを提示
「安定したコイン」を好む人も嫌う人もいるが、ここ2年間で人気が急上昇下ことは事実である。実際、オムニレイヤ(Omni Layer)プロトコルを用いて開発された仮想通貨テザー(Tether/USDT)は異常と言えるほどの人気がでた。他の資産に対して価格が固定された仮想通貨という概念はJR Willett氏が執筆したMastercoin(マスターコイン)のホワイトペーパーで初めて提示されて以来、議論が活発化し2014年頃に本格的に論じられるようになった。それ以来、このような仮想通貨の開発が行われるようになったが、「価格を固定」することに失敗したものがほとんどであった。例えば、Nubits(USNBT)という仮想通貨は1ドルの価格に固定されるはずだったが、2016年6月9日のリリース以来約1ドルで価格が維持されていたものの、その後から2016年9月6日までは1ドル以下に価格が落ち込んだ。そしてそれから3月21日までは再び1ドル程度に価格を維持することに成功したが、これ以後1ドルという価格は全く維持できないものとなってしまった。
「安定したコイン」の王様、テザー(Tether/USDT)
2014年11月、Reeve Collins社は、オムニレイヤ(Omni Layer)プロトコルを使用したBitcoin Core(BTC)ネットワーク上で開発する仮想通貨「Tether」のプロジェクトを公開しました。Omniネットワークでは、ビットコイン(Bitcoin/BTC)チェーンに埋め込まれたメタデータにより作成したトークンを付与/取消でき、このプロジェクトで誕生した仮想通貨がUSDTである。発行されたUSDTは全て1米ドルに固定されており、開発グループによるとTether Limited社の銀行の準備金にすべての資金が保有されているそうだ。このようなアイデアは議論の的となり、USDTは多くの注目を集めた。
このような状況にも関わらず、仮想通貨テザー(Tether/USDT)は2015年2月にCoinmarketcap(コインマーケットキャップ)で記録が始まって以来、一貫して価格が安定している。市場での価格変化の先が見えない時、投資家にとってテザー(Tether/USDT)という仮想通貨は逃げ場のような存在になっているようだ。テザー(Tether/USDT)を使用することで仮想通貨投資家はいちいち法定通貨を利用する必要がなく、様々な取引プラットフォームで利用できることが理由のようだ。テザー(Tether/USDT)が取引可能なプラットフォームにはBinance、Poloniex、Bitfinex、Okex、Huobi、Hitbtc、Bittrex、ZB.com、Bitforex、Fcoinなどがある。他の多くの仮想通貨は価格変動が激しいが、このようにテザー(Tether/USDT)は安定しているので、仮想通貨時価総額トップ10に入ることに成功し、現在第9位である。
Maker DaoとDaiトークン
その他に一定の価格を保っており注目すべき仮想通貨といえばMaker Daoで開発されたトークンDaiである。Maker Daoは、イーサリアム(Ethereum/ETH)ネットワーク上に構築されたプロトコルであり、基本的にトークンを固定する時はドル変換レートを使用することになっている。ユーザーはブロックチェーン上の資産を担保として預けて、安定したトークンDaiを作成する。DaiはCoinmarketcap(コインマーケットキャップ)で記録が始まって以来、価格は0.99ドルから1.02ドルの間で安定している。Daiトークンは比較的新しい仮想通貨でまだテザー(Tether/USDT)ほどの人気はない。しかしながら、Maker DaoとトークンDaiは常に分散型取引所(DEX)やBancor、Radar Relay、Ethfinexなどの他のトークン取引プラットフォームで取引されている。Daiはこのようなプラットフォーム上で、レバレッジ取引のために利用されることが多いようだ。Daiは一ドルに固定されているという特性を生かして取引が行われているのだ。
Trust Token Asset Tokenization Platformで発行されたTrueusd
最後に「Trustusd」という仮想通貨を紹介する。このコインはTrust Token Asset Tokenization Platformというプラットフォームで発行されたものだ。TUSDの開発グループによるとこのトークンはイーサリアム(Ethereum/ETH)ベースのプラットフォームで様々なエスクロー口座に分散して保管された担保付き米ドル資産により裏付けられているそうだ。テザー(Tether/USDT)のように価格は1コインあたり1ドルに固定されており、現時点では時価総額は6000万ドルである。最近ではテザー(Tether/USDT)のように安定したコインとしてのペアリングに用いられるようになってきた。つい最近では、インドの取引所ZebpayがTrust Token Asset Tokenization Platformの利用を開始することを発表し、取引所BittrexとBinanceがTrustusdの取引サービスを開始した。TrustusdはCoinmarketcapで2018年3月6日に記録が始まり、1コインあたりの値段は0.99ドルから1.01ドルの間で非常に安定している。
他にも「安定したコイン」が開発途中
上記の3種類の仮想通貨は今の所最も人気があり、様々なプラットフォーム上での取引が活発になってきている。以前は議論の的となっていたテザー(Tether/USDT)は今や不動の地位を築いたと言える。しかしながら、仮想通貨業界では他にも「安定したコイン」や他の概念による仮想通貨の開発が予定されている。
kowala(KUSD)という安定したコインの開発グループは最近、ハードウォレット企業Ledger社と提携した。Ledger社のデバイスを利用することでkowala(KUSD)の送受信と貯蓄ができるそうだ。もう1つの「安定したコイン」はNUSDと呼ばれ、EOSブロックチェーン上でHavvenという開発チームにより発行されたようだ。他にも、スイスで金庫に収納されている金塊を担保として、スマートコントラクトのプラットフォーム上でUsdvault(USDVAULT)というトークンの発行が予定されている。Usdvault(USDVAULT)の開発者によると、このトークンは基本的に1ドルあたり1コインで価格が固定される設計のようだが、スイスの金庫で保管された貴金属により担保されているということが重要なようだ。またユニコーンの仮想通貨企業であるCircle Invest社が同じく米ドルに固定された仮想通貨の開発に取り組んでいると発表したことも記憶に新しい。
このようなコインには論争を招いてしまっているものもあり、特定の資産によりトークンが担保されているということを信頼して投資する必要があるが、これまでのところ全体的に人気を見せている。もちろん、本当にこれらの仮想通貨が米ドルに固定されているのか、時間が経過しても米ドルと一定の価格比を保つことができるのか、というようなことは常に関心の的になっている。
[Bitcoin.com からの翻訳]
画像提供:(pixabay)